《冨嶽三十六景》は江戸時代を代表する浮世絵師、葛飾北斎(1760-1849)が描いた錦絵(一般向けに販売された多色摺りの浮世絵版画)の揃物(シリーズ)です。出版されたのは天保初期頃(1830〜34)、北斎の70歳代前半期に当たります。全46図から成り、江戸の各所を中心に、東海道沿いや富士山周辺など、東は常陸国(現在の茨城県)から西は尾張国(現在の愛知県)まで、様々な土地からの富士の姿を捉えています。山の稜線や山肌の色合いなど富士自体の造形上の変化はもちろん、構図上の工夫、異なる時刻や季節の設定、様々な人々の営みと組み合わせて、数々の魅力的な富士図を生み出しました。この揃物は庶民の間で高揚していた霊峰富士への信仰も相まって人気を博し、風景画が一躍浮世絵の主要ジャンルとして定着する契機となった記念碑的作品といえます。またその斬新な造形表現は西欧の芸術家たちにも清新な刺激を与え、北斎のみならず日本美術を代表する作品として、国際的にも広く知られています。
読み方:錦絵=にしきえ/揃物=そろいもの/常陸=ひたち/尾張=おわり/稜線=りょうせん
当館は《冨嶽三十六景》全46図の内43図、同じ図で複数点あるものがあり、合計62点を所蔵しています(2022年1月現在)。その内訳は、新庄コレクション(1983年度収蔵)・21点、永田コレクション(2017年度収蔵)・21点、そして島根県が独自に購入した20点です。この62点の中には、シリーズ中で“三役”とよばれる人気作「凱風快晴」(赤富士)・「山下白雨」・「神奈川沖浪裏」が各2点ずつ、2セットあり、中でも新庄コレクションの赤富士は、1970年の「万国博美術展」で世界の名画と共に展示された逸品です。他にも摺りや保存状態が良好な作品があり、例えば、新庄コレクションの「深川万年橋下」、永田コレクションの「江都駿河町三井見世略図」・「諸人登山」、島根県購入の「常州牛堀」・「本所立川」・「東海道程ヶ谷」などはいずれも優品といえるものです。また資料的価値が高い、校合摺(色指定のために最初に摺られる輪郭線だけの摺)が3点含まれています。
読み方:校合摺=きょうごうずり
当館は《冨嶽三十六景》全46図の内43図、同じ図で複数点あるものがあり、合計62点を所蔵しています(2022年1月現在)。その内訳は、新庄コレクション(1983年度収蔵)・21点、永田コレクション(2017年度収蔵)・21点、そして島根県が独自に購入した20点です。この62点の中には、シリーズ中で“三役”とよばれる人気作「凱風快晴」(赤富士)・「山下白雨」・「神奈川沖浪裏」が各2点ずつ、2セットあり、中でも新庄コレクションの赤富士は、1970年の「万国博美術展」で世界の名画と共に展示された逸品です。他にも摺りや保存状態が良好な作品があり、例えば、新庄コレクションの「深川万年橋下」、永田コレクションの「江都駿河町三井見世略図」・「諸人登山」、島根県購入の「常州牛堀」・「本所立川」・「東海道程ヶ谷」などはいずれも優品といえるものです。また資料的価値が高い、校合摺(色指定のために最初に摺られる輪郭線だけの摺)が3点含まれています。
読み方:校合摺=きょうごうずり