葛飾北斎 冨嶽三十六景 凱風快晴

葛飾北斎
かつしかほくさい

冨嶽三十六景 凱風快晴
ふがくさんじゅうろっけい がいふうかいせい

天保初期(1830~34)頃、大判錦絵、[新庄コレクション]

Katsushika Hokusai
The series Thirty-six views of Mt.Fuji (Fugaku sanjūrokkei) : South wind, clear sky
[Shinjō Jirō collection]

凱風とは南から吹くおだやかな風のこと。快晴の青空には畝雲が広がり、赤茶けた山肌をした夏の富士が、威風堂々たる姿で描かれています。富士の頂から山腹にかけて、褐色から赤、そしてゆるやかに樹海へと溶け込んでいく、丁寧なぼかし摺が施されており、うっすらと浮かぶ板木の木目と相まって、富士の山肌は実に複雑で豊かな表情をみせています。こうした繊細な表現は、本図の初期の摺りにおいて見られる特徴であり、後摺では山肌の赤みが強調され、樹海との境界が直線的に摺られるようになります。簡潔な構成と限定的な色数ながら、荘厳な富士の麗容を見事にとらえた、北斎の代表作です。
新庄コレクション本は、大阪万国博覧会(1970年)の際の「万国博美術展」に浮世絵を代表して出品され、新庄自身も「コレクション中の白眉」と評した自慢の逸品です。

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