鈴木春信 見立三夕 西行法師

鈴木春信
すずきはるのぶ

(見立三夕)西行法師
(みたてさんせき) さいぎょうほうし

明和二~七年(1765~70)頃、中判錦絵、[新庄コレクション]

Suzuki Harunobu
Parody of three poems : Saigyō-hōshi
[Shinjō Jirō collection]

鈴木春信は江戸時代中期を代表する浮世絵師で、錦絵(多色摺木版技法)の確立に寄与しました。本作品は、『新古今和歌集』中の「秋の夕暮」で終える定家・寂蓮・西行法師による三首の和歌に因む三枚続の内の一図です。19世紀後半、林忠正を経てパリの宝石商アンリ・ベベールが所蔵していた作品で、1974年に新庄二郎がオークションで入手しました。新庄はこの作品を念頭に、自身の蒐集家としての信条を次のように書き記しています。

「これらの浮世絵は三〇〇年から一〇〇年ぐらい前に作られたもの、今ここにあるのは、遠くヨーロッパを廻って再び帰って来た林忠正(中略)の印のあるものもあり、色々の人の手から手へと渡って今ここにあり、私は日夜愛惜しているものの、私も既に老境、やがては誰かの手にゆだねられる運命でしょう。私はコレクターなどうぬぼれた心はなく、唯私がお預かりしている間は、虫にも喰われぬ様、水、火にも入らぬ様常に心がけ、次の人の手に無事お渡しするまでのいわば堂守のつもりでおります。」(福井県立岡島美術記念館編『新庄コレクション 浮世絵名作展』(1976年)より)

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