葛飾北斎
かつしかほくさい
(鎌倉勝景図巻)
(かまくらしょうけいずかん)
寛政五~六年(1793~94)、摺物(木版着彩)、一巻、[永田コレクション]
Katsushika Hokusai
Picture scroll of the famous views of Kamakura
[Nagata Seiji collection]
北斎の「春朗期」(数え20歳~35歳頃)における新出作。893cmの長大な画巻に、杉田から鎌倉、七里ヶ浜、江ノ島に至るまでの名所30図を収めた、俳諧用絵半切です。絵半切とは、書簡等で用いられた絵入用箋のことで、消耗品のため遺存数は少なく、本巻自体も他に遺存例を聞かない、極めて稀少な作品です。
本巻末尾には朱文円印「叢春朗」とあり、寛政五、六年(1793、94)頃、春朗期末頃の作と考証されます。俳句を書きつけることを考慮して余白は大きく、各図は小さいながらも緻密で、筆による彩色も穏やかです。その作風は勝川派の様式とは異なり、摺物の分野で活躍する次期「宗理様式の時代」に通じており、従来あまり知られていなかった俳諧分野との繋がりを示す点でも興味深く、春朗期における北斎の新たな側面を窺わせる貴重な作品として注目されています。
読み方:絵半切=えばんぎれ/叢春朗=くさむらしゅんろう/摺物=すりもの