葛飾北斎
かつしかほくさい
文昌星図(魁星図)
ぶんしょうせいず(かいせいず)
天保十四年(1843)、絹本着色、一幅、[永田コレクション]
Katsushika Hokusai
Bunshōsei
[Nagata Seiji collection]
北斗七星の第一星「魁星」は中国で文運を司る神として信仰され、造形化される際には、「魁」の字が「鬼」と「斗」から成ることから、斗(枡)を持つ鬼形の姿で描かれました。北斎描く魁星もこれに倣い、手足が三本指の鬼が枡を手にしています。筋骨隆々たる赤い体躯を宙に浮かせ、天の六星を見上げるその姿には、どこか神秘的な印象を受けます。
文昌星とは『史記』「天官書」に「斗魁戴匡六星曰文昌宮」と記される星座で、魁星同様に文運の神として信仰されました。江戸時代から魁星と混同された例が散見され、本作品の「文昌星図」としての伝承が制作当初からかは不詳です。なおこの作品の旧蔵者であった画家・河鍋暁斎は軸裏に「文斗星」と書き付けています。いずれにせよ、熱心な北斗信者であった北斎を象徴する重要な作品であることは間違いありません。
読み方:魁星=かいせい/斗=ます/河鍋暁斎=かわなべきょうさい