当館コレクションで辿る北斎の人生
当館北斎コレクションの大きな特徴が、
目まぐるしく変化した
北斎の画家人生を通覧できる点です。
北斎は浮世絵師としてデビューした20歳から亡くなる90歳までの約70年の間、傾注した分野や画題、画風が目まぐるしく変化しました。そのため、北斎の画家としての人生は、その時期に名のった主な画号から「春朗期」・「宗理期」・「葛飾北斎期」・「戴斗期」・「為一期」・「画狂老人卍期」の6期に大別されています。当館はこの6期それぞれを象徴する作品はもちろん、寡作とされる分野の希少な作品も網羅しており、単館のコレクションながら、変化に富む北斎の画家人生を通覧することができます。
江戸の本所割下水(現・墨田区)に生まれたと伝えられています。役者似顔絵の第一人者・勝川春章の門人となり、はじめは春朗、後に宗理、辰政、葛飾北斎、戴斗、為一、画狂老人卍など多くの画号を用いました。勝川派以外の浮世絵諸派をはじめ、狩野派・琳派・中国画・西洋画など幅広い絵画表現を旺盛に学び、錦絵・摺物・版本・肉筆画の各分野において、役者絵・美人画・武者絵・花鳥画・名所絵・化物絵など様々な画題の作品を手がけました。また120畳の巨大な達磨絵制作、90回に及ぶ引越しなど、その人物像を伝える逸話も多く知られています。代表作の『北斎漫画』や《冨嶽三十六景》は早くから西欧で注目され、19世紀後半の西欧の芸術家たちに清新な刺激を与えました。
(*1)「狂歌本」(きょうかぼん)…狂歌とその内容に即した挿絵を組み合わせた版本。各ページで狂歌と絵を組みあわせた狂歌絵本と、狂歌と挿絵のページがそれぞれ独立した絵入り狂歌本があります。/(*2)「読本」(よみほん)…文章主体の長編小説。半紙本5~6冊で一編を成し、各冊に見開きで5点程の挿絵があります。物語の内容は、英雄譚、怪談物、仇討ち物、お家騒動など。/(*3)「絵手本」(えでほん)…絵を学ぶための手本とされた図のこと。有力な浮世絵師は、数多くの門人や私淑者を抱えており、彼らのためにしばしば版本や肉筆の絵手本を制作しました。